酔っぱライタードットコム - 酔いどれエッセイ/電光石火

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酒にはそれぞれ思い出があり、ストーリーがある。とはいっても、酔っぱライター的には、小説になるような美しいお話ばかりではない。酔っぱらって怪我をしたり、記憶をなくしたり、死にかけたり。かと思うと、飲む相手を間違えてからまれたり、たかられたり。そんな抱腹絶倒・悲喜こもごものショートエッセイ集。

電光石火


10年前、北九州市に行った時、キョーレツな人に出会った。酒屋の主人で、見たところきさくで人のよさそうなおじさん。でもこの人、自分の気に入った酒しか店に置かないという志を抱き、うまい酒を求めて全国を歩き回った期間20年間。かけた金額が4500万というから驚く。

さらにこの酒屋、店以外になぜか立派な「ギャラリー」なんぞを建てて、ファンである山頭火の句を秋山巌画伯に書かせた版画を展示し、ことあるごとに「ゆうぜんとしてほろ酔えば雑草そよぐ・山頭火」などと口走る。好きなものにはとことんいっちゃう性格らしい。

酒だって集めただけじゃあきたらず、ここぞという酒造メーカーと組んで、オリジナルブランドの酒まで造っているのだ。その数28銘柄48アイテム。すごすぎる!

取材に行ったら大歓迎しくれ、十四代や久保田は言うに及ばず、秘蔵の古酒やら菊姫で試作した原酒やらすごい酒をドンドン飲ましてくれた。でも、飲み比べてわかるのは、オリジナルの「電光石火」がいかにうまいかということ。あの香りと複雑なうま味は、どの酒もかなわない。ウマすぎる!

飲み会は大盛り上がりで、店主は「もうウチに泊まっていっちゃいなよー」と言うが、私は最終の飛行機で帰らなければならない。後ろ髪を引かれる思いで店を出ると、「すいませーん、遅くなっちゃって」と寿司屋が登場。なんと寿司までとってくれたのか! おじさん、ごめん! 次は絶対朝まで飲み明かすよ!

しかしあの大量の寿司は、あれからどうなったのかな〜。食べたかったよな〜。












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