酔っぱライタードットコム - 造り手訪問/里の曙

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私が初めて奄美大島に来たのが3年前。そのとき名瀬のスナックに連れて行かれ、驚いたことがある。お店の女の子も、お客さんも、みんな黒糖焼酎を飲んでいるのだ。そのとき、棚にズラリと並んでいたのが「里の曙」だった。

「たしかに20年前まで、島内でもスナックで黒糖焼酎を飲む習慣はありませんでした。そういうところでは、だいたいウイスキーの水割りでしたね。黒糖焼酎といえば、特有の香味のある常圧蒸溜により製造された奄美大島特産の酒で、主に晩酌用で男性に飲まれていました」と話すのは、町田酒造の営業部長・坂元廣範さんだ。

しかし、平成3年に町田酒造が、減圧蒸留の黒糖焼酎「里の曙」を出してから、状況は一変した。これまで常圧蒸溜しか飲んだことのなかった人にも、「飲みやすい」と大好評。とくに若者や女性に支持され、黒糖焼酎のファンが拡大していった。

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「もともと男性が晩酌の時にお湯割りで飲んでいた黒糖焼酎を、『里の曙はロックが旨い』と売り出した。それで飲み方もガラリと変わりました。今ではスナックの女性たちも、あたりまえのように黒糖焼酎を飲んでいますよ」

奄美にしかない黒糖焼酎の研究室

工場長の佐無田隆さんに、工場を見せてもらった。麹を造る米は、国産米やカリフォルニア産のジャポニカ種の破砕米を使っている。破砕米は、水を吸う速度が速いため、作業時間の短縮になるという。米は連続蒸米機で蒸して、円板式の製麹機で麹米を造る。

一次もろみは、中に蛇管が入ったタンクに入れ、コンピュータ管理で温度調節して、温度が上がらないように気をつけながら、6日間発酵させる。もろみ温度はだいたい30度以下である。

二次もろみは、一次もろみに黒糖を入れて9日ほど発酵させる。もろみタンクは13トン仕込みが27本。1日4回の蒸溜で、アルコール度数約43度の原酒ができる。これをブレンドして3年以上寝かせている。

町田酒造には、立派な研究施設があり、小さな回転ドラムやタンク、小型の蒸留機がそろっていた。「黒糖焼酎は奄美でしか造ってはいけないので、鹿児島本土にも本格的な研究室はないのです。黒糖焼酎については自前で研究施設を作る必要があるのです。まだ十分ではありませんが、黒糖焼酎についてはここでほとんどの研究ができます」と佐無田さんは胸を張った。

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杜氏の長谷場洋一郎さんにもお話を伺ったところ、町田酒造に勤める前は、まったく酒造りをしたことがなかったそうだ。「むしろひたすら飲む方で(笑)。お酒は好きで、なんでも飲みます。地元では黒糖ですが、鹿児島に行けば芋も飲むし、日本酒も飲みます」

だから「里の曙」は、飲み手の発想で造られたといってもいい。常圧蒸溜から減圧蒸留へ。そして、島では普通30度だったアルコール度数を下げ、25度にした。「配合する黒糖の割合も高くしました。原料の味わいを出したかったからです。黒糖は原料代が高いのですが、それでもあえて多くしています」

長谷場さんに「やりがいは?」と聞くと、「黒糖焼酎は、まだ世間にほとんど知られていないし、造りもあまり研究されていない未知のことも多い酒。その大きな可能性に、やりがいを感じます」とのことだった。

黒糖焼酎はまだ解明されていない部分も多く、いくらでも研究の余地があるという。黒糖焼酎のイメージを一新した「里の曙」を超える酒はできるのか。町田酒造では、まったく新しい黒糖焼酎を生み出す研究が続けられている。

外観*.jpg町田酒造株式会社
創業平成3年 年間製造量20000石
鹿児島県大島郡龍郷町大勝3321
TEL0997-62-5011
http://www.satoake.jp/





1黒糖を溶かす
2連続蒸米機
3製麹機
4一次仕込み室
5二次仕込み
6蒸留機
7里の曙のお酒
8佐無田隆さんとともに

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