酔っぱライタードットコム - 造り手訪問/弥生・まんこい

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早朝7時。杜氏さんを訪ねて弥生焼酎へ行った。現れたのは、上半身裸の男性。全身真っ黒に日焼けしているせいか、あまり違和感はない。この人が、杜氏の本田博孝さんだった。独自の理論で焼酎造り18年。黒糖焼酎界のある意味「異端児」と言われているらしい。

弥生焼酎の一次仕込みはかめつぼ仕込みであった。黒糖は糖分がたっぷりあるため、麹がなくてもアルコールはできるのだが、本田さんは、米麹が焼酎の味を決める調味料だという。だから、麹造りに手は抜かない。全自動回転ドラムを使うが、人の手が加わらないので、かえっていい麹ができるそうだ。

「米はタイ米です。日本の加工用米は古々米なので、吸水率がバラバラで、蒸し上がりが均一にならない。タイ米の方がいい状態で麹の出来が良く、味が全然違います」

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もろみは一次仕込み、二次仕込みと短い発酵期間を経て蒸留となる。本田さんは、酵母が一番増えた状態で二次がけする。これは、良い米麹を造らないとできないワザだ。その後は温度管理と櫂入れだけで、麹が勝手にもろみを仕上げてくれるという。

「二次もろみを見てください。泡が全然ないでしょう?ここに泡があったらダメなんです。泡は、黒糖が悪い証拠。焼酎に使う黒糖は、糖分の割合が高ければ高いほどいい。食べて苦み・渋みのある黒糖は、実糖分が低いので焼酎には向かないのです」

もろみ温度にも、本田さん独自のこだわりがある。「みんな怖がって30度に設定するけど、うちは33度。ピーク温度にならないということは、発酵に何か問題があるということ。それをすぐ見つけ出して対処するため、もろみ温度はピークまで上げます」

弥生焼酎では、全量常圧蒸留だ。30年以上使っている年代物の蒸留器は、「どんなもろみを造っても、辛い焼酎ができてしまう」と本田さんを悩ませていた。そこで、ネックを短く改造。圧も強めにしたところ、味と香りが出てきたという。もう一つの蒸留器は新しいのだが、圧力口が5つもあるという見たこともない形。これも本田さんの手作りだとか。圧力を強めることで、より旨味の濃い焼酎ができるそうだ。

見て「考える」のではなく、「感じる」こと

焼酎は、寝かせれば寝かせるほど味が良くなると言われているが、本田さんが考えたのは、「造ってすぐでも、寝かしたかのような味わいのある焼酎にすればいいじゃないか!」という逆転の発想だった。ここからは企業秘密だと言って教えてくれなかったが、「常識を覆す方法」ということだった。「今は自分の独学と考えで造っている」と豪語する。

いったい、彼の造る黒糖焼酎とは、どんな味なのか? 事務所で利き酒をさせてもらった。まず、黄麹で造った「碧い海」。柔らかい甘みと、減圧蒸留のような軽さ。旨い! 本田さんは、「黄麹焼酎が酸化して酸っぱく感じられる焼酎があるけれど、あれはダメ。本来は、こうして甘みが出るはずなんです」と言う。

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奄美最古の銘柄である「弥生」は、ガツンとくる深みと香ばしさが特徴だ。樽貯蔵の「まんこい」は、寝かせた熟成感と樽由来のフレーバーが心地よい。驚いたのは、粗濾過した「荒ろか」。濾過しなくてもいいような最高の焼酎を造り、ほとんど濾過せずに造られた逸品で、モンドセレクションの最高金賞を取っている。その味は、マイルドで洗練されていて、ふわっと広がる旨味が最高だ。ウマい!ウマすぎる!

本田さんは、5人いる蔵子さんに、自分の技術や知識をいちいち教えず「自分でつかめ。それができないヤツは辞めろ」というスタンスを貫いている。「分析なんてしない。見て、食べて、嗅いで、触れて、感じるだけ。直感は正直。見て考える人はダメ。見て感じる人になりなさい、と言っている。直感で答えが出る。それはほぼ合ってます」

まだ若く、「いつも次を考えている」という本田さん。これからどんな黒糖焼酎を造っていくか楽しみである。

外観*.jpg創業大正11年 年間製造量2500石
弥生焼酎醸造所
鹿児島県奄美市名瀬小浜町15-3
TEL0997-52-1205
http://www.amami.or.jp/yayoi/yayoi/





1一次仕込み
2二次仕込み
3古い方の蒸留器
4新しい蒸留器
5かめ貯蔵
6樽貯蔵
7弥生焼酎のお酒
8本田博孝さんとともに

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