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アフリカの酒を飲む!

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行って来ましたアフリカへ!今回は、南アフリカから入り、ジンバブエ、ナミビア、ボツワナを飲み歩く二ヶ月の旅だった。どの国も面白かったが、一番変な国は、まちがいなくナミビアだろう。ナミビアには、日本大使館も商社の事務所もなく、公的なボランティアもいないから、日本人の姿はほぼ皆無。名実ともに日本から「遠い国」だ。とくに私が歩き回ったのは、首都からも遠く離れた、国境沿いに広がる無法地帯だったので、とにかく怪しいことばかりなのだった。

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まず驚いたのは、ここではいろいろな地酒の材料が商品化され、スーパーマーケットナ堂々と売られていたこと。まるで密造酒を奨励しているかのようである。それもかなりインスタントなしろもので、パッケージには「これを5リットルのお湯で溶いて1日たつと出来上がり」などと書いてある。こいつを使えば、かつては雑穀を粉にひいて、7日もかけてつくっていス伝統酒を、わずか1日でつくることができるのだ。すごい技術である。しかしよく見ると、ほかの商品はほとんど南アフリカからの輸入品で、純国産品はこの「地酒の素」ぐらい。国産インスタントコーヒーより先に、インスタント地酒を開発してしまったナミビア人は、とんでもな「酒好きに違いない。

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たしかにこの辺りの飲み屋の数は半端じゃない。幹線道路沿いは、バーだらけ。住人全員がバーをやっているかのような勢いで、地平線の果てまで林立している。バーといっても電気も水道もない、トタンやベニヤの掘っ立て小屋だ。自分の住んでいる家の壁に「BAR」と書き、ビールの1本でも置いておけば、もう立派なバーとして通用してしまう。そんな安直なバーが、お手軽な「地酒の素」を買い込み、勝手に酒をつくっては売っているのだ。

こんなにバーだらけでは、客になる人がいないだろうと思うと、それがいるから不思議である。ここではビンボー人は地酒を飲み、少し懐に余裕があるとビールを飲む。地酒は1リットルが日本円にして約14円。ビールの小瓶が約60円だからその差は大きい。しかし、地酒のアルコール度数はビールよりずっと低く、強烈な酔いはいっこうに回ってこない。私の場合、2リットルくらい飲んでようやくフワッとし、あとはどんなに飲んでもほろ酔い気分が続くだけ。これは「ヒマはあるがカネはない」ビンボー人が、朝から晩までダラダラと飲んでいられる、たいへんけっこうな酒なのだ。さらに、ある程度栄養もとれるし腹もふくれるとあって、この地で食事もとらずに地酒だけで生きてる人は数知れない。

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私もいろいろな酒場へ行っては飲みまくったが、どこでもモテモテだった。いつも優秀な日本製品は見ていても、日本人を見たことのないナミビア人にとって、日本の女はパンダ以上の希少価値があるらしい。とはいえ、酒場で嫌ネ思いや危険な目にあったことは、一度もない。みんな紳士的で楽しく、そういう点では日本人のスケベオヤジのほうが、よっぽどタチが悪いと思う。夜の掘っ立てバーの店先で、ランプを囲んで地元の人たちと飲む地酒は格別だが、ちょっと恐ろしい話も聞いた。アフリカの地酒には病原菌が混入することがあり、しばしば死者が出るのだそうだ。幸か不幸かそれを知ったのは帰国直前で、すべての地酒は私の腹におさまった後であった。

1 ジンバブエの国民酒チブクのバー。このサーバーで1リットルずつ量り売りする。
3 スカッドと呼ばれる容器入りのチブク。甘くない甘酒のようなドロッとオた酒だ。
5 ジンバブエのショナ族の酒ンダーリを回し飲み。真ん中の壺がンダーリ。ひしゃくですくって飲む。
6 ナミビアのカプリビ地域の酒ムチョアラ。ソルガムとトウモロコシが原料。
7 できたてのムチョアラは、リンゴっぽい味でなかなかいける。
8 スーパーに売っている「地酒の素」。ナミビアでもこんなものは辺境にしかない。
9 ナミビアの辺境カプリビの村で見つけた飲み屋のママさん。
10 ナミビアの酒場で。みなさんフレンドリーで、楽しく飲ませてもらった。
11 ドライフルーツの蒸留酒オンビキをつくるオバンボ族。これは激ウマ!
12 ボツワナの酒モチェマ。パーム椰子の樹液をこうして瓶に集めて発酵させる。けっこう強い。
13 ボツワナの酒モココの酒場。看板もない普通の民家で中は真っ暗。
14 フルーツの酒マルーラは甘酸っぱくておいしい。
15 ボツワナの酒カーディの青空バー。木の実からつくる。フルーティーでうまい。
16 ブッシュマンが蟻塚から材料を掘り出すというナゾの酒。カラハリ砂漠で発見。


詳しくは・・・
「よっぱライター南部アフリカどろ酔い旅」河出書房新社

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